7月25日(土)、青山学院大学 青山キャンパスにて開催された「VRキャンパスプロジェクト活動報告会 ― メタバース・VRを活用した教育活動研究会 ―」(主催:青山学院大学 青山スタンダード教育機構)に、本校情報科教員が登壇者として参加してまいりました。
大学・高等学校・社会連携それぞれの現場で、VRやメタバースを教育にどう活かしていくかを共有する研究会です。本校からは、STEM部の生徒たちが取り組んできたメタバース空間設計と、日進市教育長へのプレゼンテーションまでの一連の実践を報告させていただきました。
発表資料はコチラ
「バーチャル」とは何か ― 開会挨拶より
開会にあたり、青山学院大学副学長・青山スタンダード教育機構長の杉本卓先生から、印象的なお話がありました。
「バーチャル」を日本語で「仮想」と訳すと、どうしても「仮のもの」「想像上のもの」という響きになってしまう。しかし英語の virtual は本来「実質的な」という意味であり、機能や本質はきちんとそこにある、という指摘です。技術的に仮の世界を作ることが目的なのではなく、教育として何を実現したいのかという本質こそが問われている。
この視点は、その後の全ての発表を貫く軸となりました。
第1部:青山学院大学の実践
二つのキャンパスを結んだ授業
理工学部の中田恭子先生からは、青山スタンダード科目「デジタル社会と創造実践」の実践報告がありました。
青山キャンパスと相模原キャンパスは片道1時間半ほど離れており、全学部生が履修できる科目でありながら、実質的には各キャンパスの学生しか集まらない状況があったといいます。そこで両キャンパスにそれぞれ30台のMeta Questを用意し、VRキャンパス上で60名が同じ授業を受ける形が実現しました。
会ったことのない学生同士が6人1組のグループを組み、ワールドを共同制作する。制作物という共通の対象があることで、「何でもいいから話し合ってください」ではない自然な対話が生まれたそうです。互いのワールドを訪問して体験し、フィードバックし合う活動は、学生アンケートでも高く評価されていました。
一方で、VR酔いによる身体的負担を訴えた学生が全体の2割強にのぼったこと、機材の初期設定や充電・運搬に膨大な手間がかかったことなど、率直な課題も共有されました。「高評価だけれど負担もある。その両方を踏まえた授業設計が必要」という言葉が印象的でした。
学生によるバーチャルキャンパスツアー
キャンパスツアーガイドボランティア(CTGV)の学生の皆さんからは、VRキャンパスを舞台にした新しいツアーの取り組みが報告されました。
対面のキャンパスツアーは毎年多くの高校生が参加する人気企画である一方、遠方に住む高校生にとっては足を運ぶこと自体が高いハードルになります。そこで学生自身がバーチャル支部を立ち上げ、ツアールートの検討、写真撮影、夜間のオンライン研修を重ね、ガイド用のオリジナルパーカーまで制作して一般公開を目指しているとのことでした。
大学生が主体となって運営しているという点に、大きな刺激を受けました。
第2部:高等学校等における実践
青翔開智中学校・高等学校(鳥取県)
社会科教員である池田夏暉先生の実践は、特に印象に残りました。
縄文時代の集落、関ヶ原の戦いの布陣、能登半島の被災前後の比較など、社会科の学びを体験に変えるワールドを次々と制作されています。中でも心に残ったのは、生徒に対して「先生のワールドの時代考証を担当してほしい」と依頼するという授業設計でした。教員が完璧に作り込むのではなく、あえて突っ込む余地を残しておく。すると生徒は教科書と見比べながら「ここが足りない」と主体的に探し始めるといいます。
新しいことに次々と挑戦し続けるその姿勢に、同じ教員として深い敬意を抱きました。

埼玉県立新座総合技術高等学校
柴田尚明先生・柿澤瑞紀先生からは、専門高校ならではの実践が報告されました。
食物調理科と情報技術科が連携し、小学生向けにテーブルマナーを伝える360度動画を制作した取り組みです。撮影は三度やり直しになったそうで、一度目は360度の特性を活かしきれず、二度目は容量不足で録画されていなかったという失敗も率直に共有されました。
「失敗を経験として積み重ねてほしい」という考えのもと、あえて事前にレクチャーせず生徒に転んでもらう。ただし転びっぱなしにはせず、録画やボイスレコーダーで後から振り返れるようにしておく。この設計思想は、本校の探究活動にも活かせる視点だと感じました。

NPO法人バーチャルほっとステーション
理学療法士でもある星野うぇあ氏からは、メタバースを活用した居場所づくりと遠隔診療の取り組みが紹介されました。
長期入院で病室から出られない子どもたち、外に出ることに困難を抱える子どもたち。そうした子どもたちに、修学旅行や運動会、お祭りといったライフイベントを届ける活動です。VRゴーグルを使えない環境ではタブレットでも参加できるよう設計するなど、届けたい相手に合わせた工夫が徹底されていました。
本校の発表
本校からは、昨年度の愛知産業大学・玉井先生との共同授業から現在に至るまでの流れを報告いたしました。
学校設定科目「デジタルコミュニケーション」における全23回の共同授業。生徒がアバターを作り、ワールドを設計し、3Dスキャンで現実の物をバーチャル空間へ持ち込んだ経験。そこから今年度のSTEM部発足を経て、生徒たちが「どんな場所なら人が集まり、居心地よく過ごせるのか」という問いに向き合い、メタバース上で空間設計に取り組んだこと。そして6月30日、その成果を日進市教育長へプレゼンテーションするに至った経緯をお話ししました。
発表後、他校の先生方から特に反響が大きかったのは、生徒たちのコミュニケーションの変化についてでした。アバターを介することで発言のハードルが下がり、普段はあまり話さない生徒が自然に言葉を交わすようになる。この現象は、青山学院大学や新座総合技術高等学校の実践でも同様に報告されており、校種を越えた共通の手応えとして共有されました。
※このプレゼンテーションについては、以前の記事でも紹介しております。あわせてご覧ください。
第3部:リアルとバーチャルを横断する体験型プログラム
最後は、青山学院大学総合文化政策学部デジタルストーリーテリングラボとNPO法人バーチャルほっとステーションによる、謎解き脱出イベント「モルフォニア・シンフォニー:崩落からの救出」を見学しました。
参加者がペアを組み、一方がバーチャル空間に入り、もう一方は現実空間に残る。バーチャル側だけでは謎が解けず、現実側の協力が不可欠になるという仕組みが巧みでした。バーチャル空間内では司会進行の方が非常に上手にファシリテーションされており、参加した子どもたちが自然に協力し合う様子が印象的でした。
「バーチャルとリアルのどちらが優れているか」ではなく、両者を行き来することで初めて生まれる体験がある。冒頭の杉本副学長のお話とも重なる時間となりました。
おわりに
大学・高校・NPOと立場は異なっても、根底にある問いは同じでした。この技術で、目の前の子どもたちに何を届けたいのか。
本校の実践を全国の場に置いてみることで、自分たちの立ち位置と次に進むべき方向が見えてきました。STEM部は夏休み明けの文化祭でメタバース演劇に挑戦します。また8月27日には、愛知産業大学で開催される第2回DXハイスクールシンポジウムにて、今度は生徒たち自身が発表の場に立つ予定です。
引き続き、本校の取り組みを温かく見守っていただければ幸いです。

STEM部に持ち帰り早速生徒が文化祭用にお揃いパーカーを制作

